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レッスルSS 「一人と二人」 起承編

 ユンSSを週一くらいで書くと意気込んでいたのも今は昔。
 ン週間に渡ってブログのトップにさいみんにー体験談を放置するという投げっぱなしジャーマン(レベル2)プレイに着いてこられている方がまだいらっしゃるかわかりませんが、再開の景気づけにSSなどあげてみたいと思います。

 ユンじゃないけど。

 自分で書いておきながら、需要の在り処が少々心配になりましたが、多分ユンに比べりゃワンダースワンとバーチャルボーイくらいは需要の差があるんで大丈夫だと思います。あ、ワンダースワンは一応カラーの方で。

 うん……クリスタル程ではないよな……



 あ、SS本文は続きをどうぞ。



「どっちが?」
 と、聞いた三歳の僕に、母は笑いながら答えた。
「どっちもよ」
 ふぅん、と僕は頷いて。もう一度、小さなベッドでそれぞれ水色とピンクのシーツに包まっている赤ん坊を見た。
「よく似てるでしょ?」
「……ぅん」
 曖昧に返事をしたのは、似ているかどうかというより、そもそも赤ん坊という生き物を見分けられる自信がなかったからだ。
「どっちも……イトコ?」
「そうね。お名前は……もう決めたの?」
 僕を抱きかかえたまま、母はベッドに横になっていた村上のオバさん――母にとっては実の妹だ――に問う。
「えぇ。大分前から、双子で女の子だろうってわかってたし。
 名前はね。赤いシーツの子が、千春。青色の子が、千秋。
 どう? 結構、良い名前でしょ?」
 今、冬なのに。
 漠然と思いながら、僕は一度に二人も増えた家族の寝顔を見つめる。
 仲良く寄り添うようにして寝息を立てる赤ん坊たちは、眠っているのにもぞもぞと生まれたばかりの体を震わせて、早くはしゃぎまわりたいと身悶えしているようだった。
 窓の外では雪が深々と降り積もっていた。

     ☆    ☆

「あべしー!」
「おそいぞー、あべしー!」
「うわっ」
 三つになったばかりの双子のイトコが、体ごと僕にぶつかってくる。
 千春と千秋。
 村上姉妹は、今日も揃って我が家にいた。
 共働きだった叔母夫妻は、近所に住む僕のウチに元気な娘たちを毎朝預けてから仕事に行っている。ヤンチャな二人は大いに子供らしく暴れたが、元々母は子供好きな性分で、幼稚園に行き始めた僕の代わりが出来て却って大歓迎といった様子であった。
 僕が幼稚園から帰ると、母を相手に一頻り遊びきった二人が、いつも決まって一直線に飛んで来た。
 まだ小学校にも入っていない子供にとって、自分より小さい「子ども」に纏わり付かれるのは、正直に言って少し鬱陶しく思う部分もある。が、それでも、妹のような可愛いイトコたちに慕われているというのは決して悪い気分ではない。
 僕も母の子、といった所だろうか。子供の身分でこう言ってはなんだが、子供の相手をするのは、自分の性に合っているようだ。
「あべしー! なんかしろー、あべしー!」
 二人は僕をあべしと呼ぶ。舌足らずで、名前をちゃんと発音できない、そんな所も子どもなりの庇護欲を誘った。
「しょうがないなー。じゃあ、今日は何して遊ぶ?」
 僕は、存分にお兄さんぶって言った。何をするか、昼の内から決めていたのだろう、二人は口々に喚き始める。二人揃えば、それぞれが一人の時より二倍どころか五倍、いや十倍は騒がしい。
「きょうはなー! かくれいろたかオニだ!」
「ちはるー、けいドロ忘れてるー!」
 たった六年の人生で何をいわんや、という話であるが、僕は「きっと、五年後も十年後も、この二人とはこんな感じなんだろうな」と思った。

     ☆    ☆

「アベシー! おっせーぞ! なにチンタラしてンだ!?」
「いや、昼休み、なって……すぐ、全速力で……」
「うっせバカベシ。遅れそーなら授業ブッチって来いよ。おら、さっさとQoo寄越せ」

 …………アレ?

 僕が通う高校から二キロ離れた中学まで、コンビニ経由で七分を切った非公式ママチャリロードレース記録が評価されることもなく、セーラー服のリボンを外した二人の「可愛いイトコ」は僕に向かってメンチを切った。
 千春と千秋。
 村上姉妹は、今日も揃ってバリバリ(死語)である。
 ちっちゃなころからワルガキだったが、十はクラスが学級崩壊。器物破損にエスケープ、喧嘩上等傍若無人な毎日を経て、今や「東中の村上姉妹」と言えば、一年生でありながらも、ヤンキー業界ではちょっとしたモノであるらしい。
 僕は心底嘆いていた。
 あんなに可愛かった二人が、どうしてこんなにグレてしまったんだろう。
 同じグレるにしても、もうちょっと他のグレ方はなかったのか。いくらなんでも今の時代にリアルでヤンキーはないんじゃないか。いやまぁ、確かにちょくちょく見たことはあるけれど、業界作れるほどの数が存在しちゃうのか。もっとあるだろう、喧嘩とかじゃなく、チャラチャラっとしてる、こう……ギャル、とか。
 なにより――
「何ボケっとしてんだアベシ、コラ。また秘孔突かれてぇのか?」
「あぁ、はいはいっ」
 千春に急かされた僕は慌てて現実に立ち戻り、コンビニ袋からペットボトルを取り出す。元は本名から来たあだ名だったアベシも、今ではすっかりモヒカンの断末魔由来の体をなしていた。
「はい、千春はいつものオレンジ。で、千秋は新味の何たらレモンね」
「毎度毎度、千春は同じのばっかでよく飽きねぇな」
「バッカ、一番ウメーのだけ飲んでりゃいいんだよ」
 言い合いながら、二人はパッパと自分の分を僕の手から掻っさらっていく。
 今日は何事もないようで、僕は内心、ホッと息を吐く。
 二人は毎日、給食の時間に裏庭に抜け出して「中一にもなって牛乳なんぞ飲んでられるか」と、僕によくよく冷えたジュースを買って来させるのだ。
 人にブッチを勧めるくらいなら自分らでちゃっちゃとサボタージュして買ってくればいいと思うのだけど。ヤンキーなんだし。
「千秋よー。色々飲みてーんなら、今度ゼンブ混ぜて飲んでみたらいいじゃね? オレンジにリンゴにブドウによ」
「このレモン忘れてっぞ。
 中々面白そーじゃねぇか、今度マジで試してみようぜ? 飲むのはアベシだけど」
 くだらなくも微笑ましい、そしてちょっぴり不安な彼女らのやり取りに、昔日の面影を感じながら目を細めていると、程なく二人の――いや、千秋の放つ違和感に気付く。
「…………」
 自転車のハンドルに掛けっぱなしの中に重みを残した袋を、伸ばして染めた髪の奥からチラリチラリと横目で覗く千秋の瞳。
 何となく嫌な流れを予感しながらも、黙っているよりは幾分マシだと思い直し、視線に応えて袋の中身を取り出す。
 大丈夫だ。今日は『秘策』もある。
「あー……あ、あとこれ。千秋に頼まれてた分のザルソバね」
 今度はぴくりっと、千春の眉が不機嫌に動く。
 あぁ――やっぱり。
「ンだと……?
 ……千秋。テメー、ナニ勝手に自分だけアベシ多用してんだ? アベシはミンナのもんだろーが?」
「はあぁぁぁーあ?
 なにドヌルイこと抜かしてんだ? センユー権ってのがあんだよバァーカ。千春はとっとと帰って、もさもさパンでも齧ってビーフン啜ってろ」
 いいなぁ、今日の給食ビーフンなのかぁ……などと、感慨にふける間すらもない。
 和やかなムードは一転、千春と千秋の間に険悪な空気が流れた。
 そう、彼女らがグレてしまったことなど、正直言ってたいした問題ではない。むしろ、ちょっとグレてるくらいで丁度いい。反抗期な少女特有の可愛らしさを堪能するために僕はパシッてるといっても過言ではない。伊達に彼女らの幼児期を教育した人間の息子してるのでは無いのだ。
 そう、そんな瑣末なことよりもずっと重要な何よりの問題は――二人の仲が、非常に悪いということである。
 しかもそれでも、何故か二人はいつも一緒につるんでいる。日頃の喧嘩の相手も七割くらいはお互いでドツキあっているだけで、きっとヤンキー業界でもその辺りを理由にして話題になっているに違いない。
 仲の悪い二人の姿は見ていて心が痛むこと極まりないし、僕の方にも八つ当たりで様々な被害が及ぶ。パシッたり罵倒されたりするくらいならまだしも、喧嘩慣れした二人の拳や蹴りは流石に辛い。
 だが、慣れているのは二人だけではない。僕にもこれまで積み重ねてきた経験は多分にあるのだ。勿論、やられるほう専門だ。
 僕は予め用意していた『秘策』を取り出した。
「ち、千春の分も買ってあるよ! ザルソバ!」
「良かったナー、千春の分もあるってよ? あたしのついでで。オマケで。同情で」
 はい、『秘策』終了。
「チャーアーキィーッ!!」
「かかってこいやアホ千春ぅ!」
「二人ともストップ、ストォップ! うわぁぁぁ、ソバツユがァーッ!」

 

 二人の初撃はまず僕の方に向けられ、二人のストッパー係が鳩尾と金的の苦痛に悶え苦しんでいる間、彼女たちは存分に殴りあった。
 結局二人の担任であり、僕がここに通っていた頃からお世話になっていた先生の登場でその場は何とか収まって。
 ケイタイで千秋に呼び出されたのは、その日の放課後。秋口の日は早々に山の向こうに沈み、頼りない街灯の下、小さい頃に三人でよく遊んだ近所の公園のすべり台にしゃがみ込んで、彼女は僕を待っていた。
 深緑のジャージの上下のスポーティさが、いかにも荒れた彼女の外見とはどうにもミスマッチだ。俯いた彼女の顔はよく見えず、その表情は窺い知れない。
「……大丈夫?」
 突然呼ばれた理由を問う前に、僕は千秋にそう尋ねた。
「このてーど、ンともねーよ」
 言って、顔を背けた千秋の頬には、青黒く腫れたアザ。それを覆いきれない白のガーゼが痛々しさを助長する。
 ――ここ最近、彼女たち姉妹の力関係には変化が起こり始めていた。
 双子というだけあって、二人は喧嘩をしても実力伯仲。簡単に「どちらかが泣いたら決着」とはいかない年頃になっても、互いに察する喧嘩の止め所は同じだった。
 それが、中学校に入った辺りから、変わった。
 二人の喧嘩の実力は、少しずつ、だが明らかに、千春が千秋を上回り始めていた。双子であっても――いや、双子だからこそ。「姉」として、千秋には譲れない何かが、千春を強くさせたのか。
「千春は、アホだからよ」
 頬のガーゼを柔らかく撫でるようにさすりながら、千秋は呟いた。
「最近アイツ、加減ってことを知らねぇ。それに、容赦なく顔面とかアバラとか、やべぇトコぶちこんできやがる」
「あぁ……金的とかね」
 悶死しかけた昼の一件を思い出し、僕は小声で納得した。
 技術を伴わない「喧嘩」においてモノを言うのは、結局のところ体格差と度胸につきる。ガタイで敵を圧倒するか、容赦なく人を殴りつけられる気性でもって押し切るか、だ。
 女子の平均程度の体格でしかない千春は、後者のスタイルを強く自分のスタイルに持ち込んだのだ。
「目立つ痕残すと後々面倒するんだから、ヤる場所は気ィつけねぇと。
 ……十二年も生きてんだ、ちっと考えりゃわかりそうなもんだぜ」
 千秋も今更、人と喧嘩することに臆するような性格ではない。だが、どこまでも容赦のない千春と比較すると幾らか自分たちの保身にも気を回してしまう千秋は、どうしても千春に一歩後れを取ってしまう。
「それで……なんで僕を呼んだの?」
「あぁ。そいつが本題だ。
 アベシ。お前、男子だよな」
「あー……ン、危うかったけど、まだ、何とか」
「……?
 よくわかんねぇけど、まぁいいや。
 実はな、アベシ。あたしは、あんたのことが好きなんだ」
 ――えっ?
 瞳を潤ませ眉宇を落として見上げる千秋と、視線が交じる。
「だからな、アベシ。
 か弱いあたしに、アホ千春から自分の身を守れるスベを。具体的には体育で習ってる柔道を教えやがれ」
「あ、そういうコト」
「おう、そういうコトだ」
 ニヤリと浮かぶ、多分に悪意を含んだ笑顔。そこには先ほどまでのしおらしさなど微塵もない。
 あぁ良かった、いつもの千秋だ。
「でも、何で柔道?」
「バッカ、頭使えよ。投げて相手をブチのめす分には、どんだけやっても後で『相手が勝手にコケただけ』って言い訳が効くじゃねぇか」
 効くかなぁ。
 うぅむ、と唸る僕の前に、突然ぬっと一抱えほどもある愛嬌溢れるウサギが顔を出した。
「とわっ――ナニ、ぬいぐるみ?」
「あぁ、千春ンとこからかっぱらって来た。
 いくらアベシでも毎日あたしに投げられちゃあカワイソウだからな、背中にでも入れてクッションにしな」
 可愛くデザインされたウサギの顔が、なんだか妙に哀れげに見えた。
 僕がぬいぐるみとアイコンタクトをしている間に、千秋は早々に砂場に立って、うんうんとストレッチを始めている。
 しかし柔道の、いや、大抵のスポーツにおいて、練習というものは千秋が思っているよりもっと地味なものだ。
「普通は柔道って、受身の練習から始めるんだけど……」
「別に、千春があたしを投げはしねぇんだから、必要ねぇだろ?」
 ですよねー。
「いいから黙って投げ方だけ教えろ。んで投げられろ」 
「はーい……」
 粛々と背中にぬいぐるみを入れながら、明日はロープを持ってこようと僕は思った。



 翌日。ケイタイの着信音に叩き起こされた僕は、早朝の公園に呼び出された。
 そこに居たのは、うっすらとした霧を伴って東の空から立ち昇る朝日をバックに、赤のジャージ姿で仁王立ちする千春。
 鋭い目つきで射抜くように凝視するその顔には、一体どこから来ているのか満ち満ちた自信が溢れかえっていた。
「よぅ、来たなアベシ」
「あぁ、うん――どうしたの、朝早くから?」
「ちっとな……千秋のアホに知られたくなくってよ」
 うんうん、とストレッチを始めながら、千春は言う。
 昨夜の件のせいでじぅじぅと痛む腰やら腕やらが、僕の頭に既視感の信号を送ってくる。
 うんうん。嫌な予感しかしない。
「昨日の夜な。アイツ、フラーっと表出て行ったと思ったら、汗だくになって帰ってきやがってよ」
「へ、へぇ……」
「最近アイツ、ナニやるにしても一々姑息なんだよ。半端な知恵ばっか付けやがって、ウダウダ考える前にぶん殴っちまえばいいんだ」
 パァン! と手の平を拳で撃って、千春は苦々しげにそう唸った。
「どうせまた何か悪巧みしてるに違いねぇ。私は姉として、ビシーっとアイツを真正面から叩き潰してやんなきゃなんねぇ。わかるな?」
「双子だなぁ……」
「何か言ったか?」
「姉より優れた妹なぞ存在しねぇと言いました」
「よろしい。じゃ、コレ持て」
 ずずいっと、僕の眼前に差し出されたのは、愛らしい顔をした大きなネコのぬいぐるみだ。
 まさか、とさえ思わない。
「これは……千秋、の?」
「お、よくわかったな。グースカ間抜けに寝やがって、楽勝でパクって来れたぜ」
 手元で一瞬ネコを一瞬浮かすと、拳一発、手渡す代わりに殴り飛ばしてパスされた。
「ま、千秋の浅知恵如きで私がどうにかなるワケもねぇが、どうせやるなら完勝、圧勝、全殺しだ。
 とりあえずこれ、ミット代わりにしていいからよ。アベシ、お前今日から練習台になれや。得意だろ? そういうの」
 双子過ぎる。
「ディフェンスの練習とかは……」
「はぁ? テメェ、私が千秋なんぞに殴られるとでも思ってんのか?」
「……あぁ。殴られ、ないか」
「あったりめぇだ! おらぁ、イクぞ右ワキ構えろぉ!」
 咄嗟。
 迷わず左ワキに構えたネコのどてっ腹に、千春の脚が食い込んだ。
 別に、フェイントというわけではないだろう。千春は「自分から見て」右のワキにキックを叩き込んだだけだ。
 すっかり彼女たちの立場からモノを見ることに慣れ親しんだ自分は、慈しみとかいうレベルを逸脱しちゃってるんじゃないかと思ったが、きっとそれは大いに今更だった。
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